世界初!乾電池による有人飛行成功

有人飛行成功

東京工業大学とパナソニックが共同で進めてきたプロジェクト「オキシライド乾電池で有人飛行」は、今年(2006年)の7月16日に、市販用のオキシライド乾電池を使った有人による飛行という、世界初の試みに成功しました。

以前から私は、日本の技術力は世界的に見ても高いレベルにあると思っていましたし、このプロジェクトの動向には、元技術者という立場から関心を持っていました。世界初の成功例という素晴らしい結果に結びついたのは、こうした高い技術力が今もなお健在なのを証明しているかのようで、日本人の1人として素直に嬉しく思いました。

特に、まだ社会に出ていない大学生の皆さんが、このプロジェクトの原動力になったことは、単なる一企業の営利や開発目的のプロジェクトとは違って、とても重要な意味を持っているように思います。これからの日本あるいは世界を背負って立つ、若い人達が中心になって成功させた所にこそ、このプロジェクトの本当の素晴らしさがあるように、私は感じました。

また、プロジェクトの成功という最高の結果を出すことができたのは、そこに至るまでのプロセス(過程)があったということも、忘れてはいけないのではないでしょうか。

個人的には、オキシライド乾電池の性能に関して、とやかく言うつもりはありません。それよりも今回大学生のみなさんが、より少ない電力での有人飛行を成功させるために、考えたり、議論したり、工夫したりするなどの経験ができたことが、世界初のプロジェクト成功という大きな結果に匹敵する、貴重な財産になるのではないかと私は思います。みんなで協力して努力した大学生のみなさんお疲れさまでした。

プロジェクトの経緯

2006.1.16 有人飛行プロジェクトを発表

2006.4.22 第一回テストフライト実施
「転がし(離着陸滑走)」「(離陸のための)滑走」成功 乾電池160本使用

2006.4.29 第二回テストフライト実施
中距離フライト」成功 高度約2m 飛行距離約400m 乾電池160本使用

2006.5.21 第三回テストフライト実施
完全自走フライト成功 乾電池160本使用

2006.6.8 第四回テストフライト実施

2006.6.26 第五回テストフライト実施

2006.7.15 機体不具合のため有人飛行断念

2006.7.16 オキシライド乾電池で有人飛行成功

一本目のフライト高度2.1m 飛行距離300m 乾電池160本使用

二本目のフライト高度6.11m 飛行距離391.4m 飛行時間59秒 乾電池160本使用

また、乾電池96本に減らしたフライトにも成功 高度1.42m 飛行距離269.3m 飛行時間39秒(初動に人による補助あり)

飛行機のスペック

飛行機の機体

総重量:107kg(機体54kg+人53kg)

主翼幅:31m

水平尾翼幅:4.0m

垂直尾翼幅:2.5m

プロペラ直径:3.2m

素材:強化発泡スチロール 特殊カーボン

無限の空と人間の未来に

大学と企業による研究は、最近ではめずらしいことではなくなりましたが、今回の乾電池による有人飛行は世界初だったということと、地球資源を大切にするというエコロジーの観点で取り上げました。

世界初の試みというのは、とても素敵なことと思います。しかし大学生のみなさんには、こうした結果だけに満足すること無く、ここでの経験を生かして、社会に出てからもより大きな視野で、未来の人々に恥じない技術者になってもらいたいと思います。

乾電池の性能のすばらしさよりも、限りある地球資源を大事にする、私たちの子供たちに恥じないような、研究や開発をしてもらえたらと思います。東京工業大学の皆さん成功おめでとうございます。